平成28年度全国ひとり親世帯の養育費の実況(その2)

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苦楽を共にした夫婦が、様々な理由から離婚を決断する際、夫婦間に未成年の子どもがいる場合、どちらが親権者になるかを決め、引き取らない側にも「養育の責任」はありますので、養育費という形で育児に携わることになります。

前回に引き続き、厚生労働省が平成28年に調査した平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告を元に、日本の養育費にまつわる実態を調査報告とともに紐解いていきます。

 


未払い養育費 相談

❖養育費の状況

(1)養育費について相談した先
母子世帯:1位親族(47%)、2位家庭裁判所(17%) ※相談していない人は全体の45%
父子世帯:1位親族(53%)、2位(弁護士) ※相談していない人は66%

(2)養育費の取り決め
母子世帯:取り決めをした 43%(文書あり74%、文書なし26%)、取り決めをしなかった57%
父子世帯:取り決めをした 21%(文書あり75%、文書なし25%)、取り決めをしなかった79%

養育費について話し合いをしていない、または支払いや金額について取り決めすらしていない方が、それぞれ過半数以上となっています。主な理由としては下記の通りです。中でも母親側は「相手と関わりたくない」の比率が圧倒的に高いのに比べ、父側は「相手に支払う能力がない」「自分の収入で経済的に問題がない」と、それぞれの立場によって理由が分かれた。

問:養育費の取り決めをしていない理由
自分の収入等で経済的に問題がない 17.5% 2.8%
取り決めの交渉がわずらわしい 8.3% 5.4%
相手に支払う意思がないと思った 9.6% 17.8%
相手に支払い能力がないと思った 22.3% 20.8%
相手に養育費を請求できることを知らなかった 0.4% 0.1%
子どもを引き取った方が養育費を負担するものだと思っていた 7.0% 0.6%
取り決めの交渉をしたが、まとまらなかった 0.4% 5.4%
現在交渉中、または今後交渉予定である 0.4% 0.9%
相手から身体的・精神的な暴力を受けた 0.4% 4.8%
相手と関わりたくない 20.5% 31.4%
その他 13.1% 11%

❖養育費の受給状況

(1)養育費受給ついて
母子世帯:現在も受けている(24%)、受けたことがある(15%)、受けたことがない(56%)、不詳(5%)
父子世帯:現在も受けている(3%)、受けたことがある(5%)、受けたことがない(86%)、不詳(6%)

受給状況をみてみると、離婚した父親から母親が養育費を受けている割合は24%に対し、逆のケース、離婚した母親から父親が養育費を受けている割合は3%と非常に少ない。

これは前出の『養育費取り決め』にもありましたが、そもそも父親は会社員として就労している割合が68.2%と高いのに比べ、母親側は44.2%と低め。

故に父親側としては「相手に支払う能力がない」「自分の収入で経済的に問題がない」という判断から、自分の収入で子どもの養育を行う人が少なくないのかもしれません。

 

(2)養育費の子どもの人数別金額
それぞれの世帯で、子どもの人数を1人~4人とした場合の、1世帯あたりの平均的な養育費月額の状況は下記の通りです。父子世帯のほうが受け取る金額は母子家庭と比べて約1万程度低い金額設定になっているようです。

平均 1人 2人 3人 4人 不詳
母子世帯 43,707円
38,207円
48,090円
57,739円
68,000円 37,000円
父子世帯 32,550円 29,375円 32,222円 42,000円

 

(3)ひとり親世帯で困っていること
母親世帯も父親世帯も、困りごとの筆頭は圧倒的に『家計』、次いで『仕事』『家事』。
男女世帯によって抱える問題点に相違はあるものの、やはり経済力に対する不安は大きいようです。

住居 仕事 家計 家事 自分の健康 身内の介護 その他
母子世帯 9.5% 13.6% 50.4% 2.3% 13.0% 6.7% 4.5%
父子世帯 4.5% 15.4% 38.2% 16.1% 10.1% 11.6% 4.1%

 

数字が物語る、ひとり親世帯の実況と、養育費に関する問題の浮彫り。離婚してシングルマザー、シングルファザーとして再出発する夫婦は多く、子どもが安心して暮らすための養育費は関わる全ての人にとって大きな課題です。

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