養育費の強制執行。財産開示手続きの対象者拡大へ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

新型コロナウイルスによる経済圧迫。

令和2年4月、厚生労働省が「ひとり親家庭等の支援について」を公表しましたが、父子家庭に比べるとシングルマザーの正規社員雇用の割合は依然低く、子育てとの両立などから低所得になりがちな母子家庭は、現在非常に厳しい状況といえるでしょう。

ある日を境に支払われなくなった養育費を、法律に則って回収する手立てに「強制執行」があります。


未払い養育費 相談

養育費の不払いに備える

そもそも、養育費が支払われなくなるケースにはいくつか理由があります。

①離婚を最優先にしたため、養育費についての取り決めをしなかった
②離婚後に再婚をしたため、前の子どもへの養育費支払いが負担となった
③離婚後、別居となった子供たちへの愛情が薄くなった
④もともと子供たちへの愛情がない
⑤ただただお金が惜しい

離婚成立後、それぞれの生活にも変化があり、またこの新型コロナウイルス下での生活に、収入減少などの経済的理由が加わるとしたら、我が身可愛さに養育費の支払いに支障がでるのは安易に想像がつきます。

順当に支払われていた養育費が、いつのまにか止まったり勝手に減額されたり。
問いただしたいけれど直接話すのもイヤ!という方も少なくありません。
専門家には、こういった養育費不払いに対する相談が多く上がっているそうです。

 

「民生執行法」と養育費

養育費の取り決めを裁判所や公正証書を通して行ったのにも関わらず、養育費を支払わず約束を守らない相手に対して、財産の差し押さえを行い強制的に養育費を支払わせることができる法的手続きのことを「民生施行法」といいます。

実際に養育費の強制執行の対象となるのは、会社などからの「給料」と「銀行預金」をベースに、不動産や保険、車や貴金属といったものも財産とみなされて対象となります。

養育費の不払いを理由に、財産の差し押さえが行われる場合、今後受け取る予定の養育費においても、差し押さえが可能になります。また、給与の差し押さえが行われる旨は、相手の会社にも知らされるため、会社に知られたくない人は、焦って滞納している未払い分を払おうとするケースもあるようです。

「オフィスにバレる」ということは、社内での立場を重んじる人には一定の効果があるわけです。

 

「民生執行法」の強制執行

実際に、養育費の未払いが起こっていなければ、財産差し押さえはできません。

また、差し押さえる給与や預貯金などの情報を把握している必要があり、裁判で養育費を取り決めた場合の「確定判決」や「和解調書」に、調停で養育費を決めた場合の「調停調書」が必要となります。

また相手の収入や預貯金の現状など、財産の状態を調べる必要がありますが、直接出向いて行って確かめることはほぼ無理なので、「財産開示手続き」などを利用して調べることになります。

 

「財産開示手続き」を利用できる対象の拡大

これまで、財産開示手続きの申し立てができるのは、調停、審判、裁判で養育費が確定している場合に限られており、離婚時に公正証書で養育費を取り決めている場合には、財産開示手続きの申し立てすらできない状況でした。

給与の差し押さえもままならず、差し押さえの前に預金口座が解約されていたり、職場が変わっていて足取りがつかめないなど、養育費の受け取りをあきらめざるを得ない状況になっていました。

しかし、今回の法改正で、たとえ公正証書で養育費の取り決めをしていても、財産開示の手続きを利用することが可能になりました!

 

開示無視や虚偽の申告者には過料を

財産開示の手続きを行っても、要求に応じない債務者は少なくありません。

その為、ペナルティとして30万円以下の過料が与えられておりましたが、法改正後は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に変更となりました。

これまでは行政の取り扱いでしたが、刑法の管轄となるため、安易な対応をすると後からとんでもないことになってしまいます。

この民事施行法の改正により、現在全体の25%程度だと言われている、養育費の回収率が上がることに期待が寄せられています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る